シュガーポットへようこそ についての考察

「シュガーポットへようこそ」という作品が先月指定図書となり、
回収に至ったことが著者のゆずぽん先生から発言されましたが、
情報が錯綜しているようなので、私なりに纏めてみました。

「回収」について
著者は回収という言葉を使用していますが、コミック専門店などはまだ販売していると言う意見があるため、
正確に言えば、書店の自主的な「返本」であると考えられます。
なぜ返本するのかというと、指定図書(東京都が指定した有害図書)は、
流通(問屋)で扱わないという自主規制があるためで、
扱っているうちに返本しなければ、再販制度に適用されなくなり、
書店が在庫を抱えることになるためだと思われます。

2013.3.25追記
一度の有害図書指定で流通業者がその図書を扱わなくなると言うことはありません。
流通業者が図書を扱わなくなるのは、「帯紙措置」と呼ばれる、
「東京都の不健全図書(有害図書)として連続3回、もしくは1年間に5回以上指定された出版物(雑誌)は、
特別な注文等がない限り取次業者では扱わない」

という自主規制ルールの場合でした。
大変失礼致しました。

「回収」は大げさな表現か?
都条例は指定図書を子供に見せないように、書棚を区分けすることを求めているものであり、
今回の書店の返本は過剰な反応ではないか?という意見があると思いますが、
都条例を詳しく見てみるとそうとは言い切れません。
都条例の第18条には指定図書の販売者に対して警告を発するとあり、
第25条には罰則として30万円以下の罰金を処すとあります。
誤って未成年に販売してしまったら、大きな損失を被ることになり、
過剰な反応とは言い切れないでしょう。

エロマンガが一般で販売されているのか?
「シュガーポットへようこそ」のように、毎話性交シーンが描かれたコミックスが、
青年コミックという扱いで一般発売されています。
これらの作品が載っている雑誌の多くは、青年向けコミック雑誌から独立したという歴史があり、
性交シーンがあれど、ストーリーに重きを置き、読みきりよりも連載作品が多いという特徴があります。
青年コミックのHな作品に特化しているものの、成年コミックよりも表現が抑え目な作品、
所謂グレーゾーンなどと言われることがあります。

成年マークを付ければ良いのではないのか?
成年マークを付け、子供に見えないように販売すれば解決するのではないのか?という意見があると思いますが、
これも都条例によると、そうとは言えません。
まず成年マークと言うのは出版社の自主規制であり、都条例では「表示図書」という扱いをしています。
指定図書は未成年に販売すると罰則がありますが、
表示図書は未成年に販売しないようにする、「努力義務」となっています。
指定図書に成年マークの描かれたシールを貼るなどして、表示図書とすればよいと思われますが、
都条例第9条の2の、表示図書の解説にはしっかりと、「指定図書は除く」と記載されているため、
指定図書の罰則は覆らないことが分かります。

性器の描写はどうなっているのか
参考画像として張られている同作品のサンプルが見られますが、あの画像は雑誌掲載時のものであり、
今回回収となった作品には、性器に対して大きな白塗りが施されており、全く見えないようになっています。
それに加えて、お尻の穴や体液についてもその縁取りが白く塗りつぶされており、
自主規制が行われています。

都条例のどこに違反しているのか?
この作品が指定図書となった根拠は、「東京都青少年健全育成審議会」によって、
以下の施行規則に触れるためであるとされています。

イ 全裸若しくは半裸又はこれらに近い状態の姿態を描写することにより、卑わいな感じを与え、
又は人格を否定する性的行為を容易に連想させるものであること。
ロ 性的行為を露骨に描写し、又は表現することにより、卑わいな感じを与え、又は人格を否定す
る性的行為を容易に連想させるものであること。

「東京都青少年の健全な育成に関する条例施行規則 第15条より」

自主規制団体からの聴き取り結果とはなにか?
この作品が指定図書とする意見として、以下のようなものが自主規制団体から出されました。

聴き取り内容
・修整はされているが、性描写が多いので指定該当
・修整されているものの、性描写が多く指定やむなし。
・消しはかなり施されてあるが、全編性描写であり、
 露骨で卑わい。指定やむなし。
・性交場面は多い。絵はコミカルで、後半の展開に問題があるが
 消しもなされている。判断が難しいが指定該当
・コミカルタッチだが性描写が多く白ヌキの修整も
 かえっていやらしい。指定やむなし。
・編集上の工夫もあるが、女性器への指の挿入等、
 性交を容易に連想する箇所が多く、指定該当
・男性器がその形状のまま白ヌキにされるのみで、
 性交自体の描き方は露骨。卑わい感も強い。指定該当
・消してはあるが、結合部分の男女の性器がリアル過ぎる。
 擬音や体液もわいせつ感を高めている。指定該当
・性描写が多く、擬音、体液の描写も多い。
 男性器を白ヌキしてあるが不十分。指定やむなし。
・絵が雑で修整もされているように感じるが、
 全体的に性交シーンが多い。指定やむなし。
・修整されているが卑わいな感じがあり、
 表紙も青少年に取りやすく成人マークを付けた方がいい。指定該当
・修整はされているものの、全編性描写で、
 シーンも非常に多い。指定やむなし。
・体液の部分はやや気になるが、修整もきれいにされており、
 この程度であれば許容範囲と考える。指定非該当
・性交場面は多いが卑わいな感じの絵ではない。
 修整も白ヌキで大きめに入っている。指定非該当


しかし、これらはあくまでも「参考意見」であり、
実際に指定図書を決めるのは「東京都青少年健全育成審議会」であります。
現に、自主規制団体の殆どが「指定非該当」とされた図書であっても、
審議会では指定図書として有害指定してしまう例はいくつもあります。

東京都青少年健全育成審議会ではどのような議論がされているのか?
今回の「シュガースポットへようこそ」を扱った633回審議会の議事録はまだ発表されていませんが、
632回の審議の様子を以下に示します。

〇会長 ご覧いただけましたでしょうか。それでは順次、各委員からご意見をいただきたいと思います。
■■委員からお願いいたします。
〇■■委員 両方指定でお願いします。
〇■■委員 2 誌とも指定やむなしと考えます。
〇■■委員 2 誌とも指定でお願いします。
〇■■委員 2 誌とも指定でお願いします。
〇■■委員 2 誌とも指定でお願いいたします。
〇■■委員 2 誌とも指定でいいと思います。
〇稲葉委員 2 誌とも指定でお願いします。
〇江上委員 2 誌とも指定でお願いします。
〇中村委員 2 誌指定でお願いいたします。
〇■■委員 2 誌指定で問題ないと思います。
一つだけ。聴き取り内容、毎回思うんですけど、非該当の方々、修整されてればいい、
という意見が散見されますので、条例の中身を本当に理解してもらえるように、促したほうがいいと思います。
以上です。
〇■■委員 2 誌とも指定でいいと思います。
〇■■委員 同じく 2 誌指定でいいと思います。
〇■■委員 2 誌とも指定でいいと思います。
〇坪内委員 2 誌指定でお願いいたします。
〇嶋村委員 2 誌とも指定でお願いいたします。
〇■■委員 2 誌指定でお願いいたします
〇会長代理 いずれも指定で結構です。
〇会長 全員の委員の皆様が 2 誌指定ということのご意見でございます。
2 誌指定ということで答申してよろしゅうございましょうか。
(「異議なし」の声あり)
〇会長 それでは、2 誌指定ということで答申させていただきます。


以上が審議会委員の審議の全てであり、指定理由などは全く意見されていないことが分かります。
この様な審議が毎月行われており、ただ都職員が持ってきた図書を素通りさせているだけ、というのが現状です。

自主規制しないから公的規制されてもしかたがないではないか
まず、自主規制と公的規制は明確に区別しなければならないでしょう。
自主規制というのは読者に対して行われる配慮であり、
読者の年齢、社会的、時代的背景などを鑑みて行われるものであり、
自主規制自体も一種の表現の一部であると言えるでしょう。
一方、公的規制は読者に対して明らかに悪影響がある場合に対して、
それを行わないように供給側に規制を設けるものであり、
今回の「東京都青少年の健全な育成に関する条例」は、青少年に対して悪影響のあるものを規制するものです。
つまり、これらは全くの別物であり、自主規制していても、公的規制されるときはされてしまうということを意味します。

自主規制しないから条例が厳しくなるのではないか?
自主規制していても、公的規制されるときはされてしまいます。
現に、コンビニエンスストアで販売されている青シールが張られて読めなくなっている成年向け雑誌は、
青少年に販売しないようにする立派な自主規制ですが、
青少年健全育成審議会では、その内容が過激ではないかと度々議論しています。
またビデオゲームにはCEROという自主規制団体があり、
レーティングなど徹底した自主規制を行ってきましたが、都条例改正で公的規制を受けてしまいました。
寧ろこれまでの都条例の改正をよく読んでいくと、
供給側の自主規制をそのまま条例に取り込むことを行っており、
自主規制すればするほど条例が厳しくなるということになっています。

著者の主張はなにか?
今回のような話題に上らないだけで、指定図書は毎月指定されています。
その著者らの意見を見ていると、その主張の多くは、
「何が指定された理由なのか、何所を直せばよいのかが分からない」
というもののようです。
自主規制団体からの聴き取り結果は、参考意見でしかなく、
東京都青少年健全育成審議会では、議論されることがなく、
条例を見れば、半裸(つまり水着、下着など)でも指定され得ると書かれています。
これでは供給側には手の打ちようがありません。

エロマンガは全て成年マークを付けて、規制してしまえばよい、という意見もあって良いと思いますが、
それと同時に条例や審議会の曖昧さ、杜撰さへの批判や議論も活発になって欲しいと思います。
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by k1kuraki | 2013-03-25 00:55 | 都条例