都条例、審議会、事務局についての考察まとめ 1/2 (画像なし)

東京都青少年健全育成審議会では、毎月数冊の有害図書を指定(指定図書という)し、
その扱いに規制を加えています。
しかし、その指定は第三者機関である審議会に権限が与えられています。
審議会に行政機関が事務という形で携わり、その権限に抵触する以上、
その事務の情報公開は最大限に行われなければならず、
行政、審議会共に条例に誠実でなければなりません。
では実際にそうなっているのか、条例や施行規則、
都が公開している情報などと照らし合わせながら考察して行きたいと思います。

■事務手続き
審議会の事務は、東京都青少年・治安対策本部の青少年課で行われています。
審議会の議事録では、事務局と呼ばれています。
8 事務
審議会の庶務は、青少年 治安対策本部総合対策部青少年課において行う。


そして審議会で審議されるまでの事務手続きは、以下のような流れで行われます。

1:書店、コンビニなどで調査対象となる図書の購入(月に100冊以上)
2:基準に基づいた諮問図書の選定(月に2冊程度)

購入する図書の対象は、一般で発売されているものに限り、
その判断は図書類の題名、表紙、帯の文言等からされ、
表示図書やシール止めされた雑誌(類似図書)は、今のところ含まれていないようです。

(イ)不健全図書類名以外の図書類名等を公開することにより、不健全図書類の指定に関する業務の効果的な遂行を不当に阻害するおそれがある(条例7条6号)
都が調査購入する図書類は、図書類の題名・表紙・帯の文言等から判断して、若しくは都民からの申出に基づいて、「青少年の性的感情を著しく刺激する」等の指定基準に該当する可能性があると推認したものである。それらの図書類のすべてが公開されると、指定基準に該当する可能性があるとして購入してきた図書類の題名・表紙・帯の文言等の共通点や特徴が、出版社に明らかとなる。その結果、内容が不健全指定に該当しうる図書類であるにもかかわらず、出版社が都の調査購入を回避するために、調査購入される図書類の共通点や特徴を避けたものを出版することにより、都の適切な調査購入が妨げられ、不健全図書類の指定に関する業務が、適正かつ効果的に遂行できなくなるおそれがある。

「平成22年1月から12月に不健全指定された図書を購入したときの領収書」の
一部開示決定に対する異議申立て
※別紙 答申(第546号)
http://www.metro.tokyo.jp/INET/KONDAN/2011/11/40lb2700.htm

上の参考文献は、都が調査購入した図書の題名などに対して公開要求された際、
その返答としてそれを拒否した際の説明文です。
業務の遂行に支障をきたすため、題名などは明かせないと説明しています。
この文面の中に購入する際の判断方法が載っており、
それは題名、表紙、帯の文言などであると記されています。
ランダムに選んでいるわけではないようです。

また、これらは非公開であり、
その理由は、図書などから、都が購入する基準としている文言を推測される恐れが、
そして、図書の題名などを変えられる恐れがあるからというものです。

しかし、これは正当な調査購入の証明を破棄するものであり、不正の自浄能力を疑うものです。
本当に調査のために資金が使われているのでしょうか?
月100冊以上の図書をどこに保管し、それらが調査のための図書だと証明できるのでしょうか?
正当性を証明できない調査の、その阻害について意見が通るとは思えません。

〇■■委員 先ほ ど、答 申で指定にな りま した 「ベス トビデオ スーパー ドキュメン トVOL.131 」は、たまたま書店ですけども、この手の写真週刊誌、いわゆるエロ本みたいと言われるようなものは、コンビニにも置いてあるんですよね。だけどコンビニは、基本的に表示図書類は扱わないので、表示図書類ではないものを、コンビニで自主的に区分陳列をして販売してる、とい うスタンスなんですけど、コンビニに調査購入に入った時、区分陳列 してる棚のほうは、チェックするんですか、しないんですか。
〇青少年課長 基本的には、コンビニの区分陳列されている棚から、購入 して、諮問することはありません。
〇■■委員 コンビニの区分陳列は、あそこに区分されてる、とい う判断に立ってるとい うことですよね。
〇青少年課長 今のところ、業界の自主規制で、シールどめをしていることを尊重して、あえて区分陳列 している棚から買ってきて、ここに諮問するとい うことは、今のところありません。
〇■■委員 しないとい うことですね。やってないとい うことですね。
〇青少年課長 今のところは、そうい う考えでやっております。
〇■■委員 ありがとうございました。確認でした。


この参考文献は第625回の議事録からのものであり、
青少年課長の答弁によりシール止め誌(類似図書)が調査購入されていないことが言及されています。
しかし、「今のところ」と言っていることに注意しなくてはなりません。
この箇所以外にも、シール止め誌について言及されていますが、
「内容が過激になっている」という意見もあり、今後も調査されないとは言い切れないようです。
(ただし過激であると繰り返すのみで、何が、どの様に過激なのか提示されていません)

2の諮問図書の選定では、旧基準の場合、
青少年の性的感情を「著しく刺激する」「刺激する」「刺激しない」の3種類に分けているようです。

(ア)不健全図書類に指定されていない図書類名等を公開することにより、当該図書類が不健全図書類の指定の疑いがあると判断され、出版社に不利益を生じさせる(条例7条3号)
都が調査購入する図書類は、図書類の題名・表紙・帯の文言等から判断して、若しくは都民からの申出に基づいて、「青少年の性的感情を著しく刺激する」等の指定基準に該当する可能性があると推認したものである。その内容を精査した結果、都が調査購入した図書類には、不健全図書類として指定されることとなった図書類以外に、不健全図書類として指定される「著しい」までの水準ではないにしても「性的感情を刺激する」等により自主的な区分陳列販売等の努力義務が課せられる基準を満たす図書類や「性的感情を刺激しない」等の図書類が混在していることとなる。指定に至らなかった図書類も含めて、調査購入した図書類全てが公開されると、当該図書類が一律に不健全図書類指定相当又はそれに極めて近いものであるとの誤解を都民等に与え、当該図書類の出版社に対する都民等の社会的評価が不当に悪化する。また、当該図書類の出版社が、当該図書類の取扱い等について都民等から説明・釈明を求められるなど、当該出版社等にとって予想し得ない負担等を強いられることとなる。これらにより、当該出版社の競争上又は事業運営上の地位その他社会的な地位が損なわれる。よって、不健全図書類名以外の図書類名、雑誌コード、ISBNコード及び出版社名は、条例7条3号本文に該当する。

 「平成22年1月から12月に不健全指定された図書を購入したときの領収書」の
一部開示決定に対する異議申立て
※別紙 答申(第546号)
http://www.metro.tokyo.jp/INET/KONDAN/2011/11/40lb2700.htm

上の参考文献は先程と同じように、調査購入された図書を公開請求された際の都の説明です。
諮問図書となるのは、「著しく刺激する」と判断された図書のみで、それ以外は除外されています。
しかし、これは新基準が適用される前のものなので、
現在はおそらく「性的感情を刺激する」図書の中から、
新基準に当てはまるものが選ばれていると予想されます。

また、前回のブログでも指摘したように、
諮問図書を新基準で審査するのか、旧基準で審査するのかの決定も都が行っています。
そして、除外された図書は公開されないので、
私たちがこの判断が妥当であるかを判断することができないという問題があります。

まとめます。
・都が諮問図書を購入する基準は「題名」「表紙」「帯」の文言等である。
・何を購入したかは、調査の妨げになるため公開されない。
・何を購入したかは、一律不健全図書と都民から疑われかねないため公開しない。
・購入された図書は「著しく刺激する」「刺激する」「刺激しない」の3種類に分けられる。
・都が「著しく刺激する」と判断した図書を諮問図書としている。
・「刺激する」と判断した図書は、表示図書とするべきと考えており、
 そのうち新基準に当てはまるものを諮問図書としている。

■2つの「著しく性的感情を刺激する」基準
旧基準の有害図書の指定方法は各都道府県で異なっており、「包括指定」と「個別指定」とに分かれます。
包括指定とは、図書に含まれる性描写が、一定の割合よりも多いと判断された図書、
すべてを有害図書と定める方法で、
個別指定は、購入された図書それぞれに個別で判断する方法です。

東京都以外の大部分の道府県は、個別指定制度のほか、包括指定制度 (「全裸・半裸での卑わいな姿態」または「性交もしくは性交類似行為」の描写の分量により幅広く規制する制度(ページ数や一冊に占める割合を基準として子供への販売制限を決める制度)を併用しています。
この包括指定制度は、大部分の道府県で 「全裸・半裸での卑わいな姿態」または 「性交もしくは性交類似行為」の描写の分量によって指定を行うものです。そして、「性交又は性交類似行為」については、性的刺激の程度とは関係ないことが多く、描かれている性行為の主体が青少年か否かを問いません。このため、他の道府県では、現在でも、青少年の性行為が一定の分量以上描かれた漫画などは指定の対象となり得ます。
一方、東京都は、個別指定制度のみを採用することで、特に慎重な手続きをとってきました。個別指定制度とは、販売されている本の中から、個別に本の内容を確認し、その性的刺激の程度を踏まえて、青少年健全育成審議会という第三者機関に諮った上で、いわゆる「18禁図書」として指定し、指定後は、子供への販売などを制限する制度です。

※別添 東京都青少年の健全な育成に関する条例改正案 質問回答集
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2010/04/20k4q500.htm

※この質問回答集は、「非実在青少年」等といった文言が書かれていた頃の古い条例案についてのもので、
青少年の性行為を規制する旨の文言があります。
それらは現在の条例に記載されているものではありません。

東京都の有害図書の指定方法は個別指定であり、描かれた分量で判断するものではありません。
つまり、どんなに描写量が少なくても指定することもあり、逆に多くても指定することがない。
その判断は条文にある基準(第8条にある旧基準、新基準)によるものです。

条文にある旧基準を詳しく見て見ます。

(不健全な図書類等の指定)
第8条 知事は、次に掲げるものを青少年の健全な育成を阻害するものとして指定することができる。
一 販売され、若しくは頒布され、又は閲覧若しくは観覧に供されている図書類又は映画等で、その内容が、青少年に対し、著しく性的感情を刺激し、甚だしく残虐性を助長し、又は著しく自殺若しくは犯罪を誘発するものとして、東京都規則で定める基準に該当し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあると認められるもの

1 東京都青少年の健全な育成に関する条例(PDF)より
http://www.seisyounen-chian.metro.tokyo.jp/seisyounen/08_jyourei.html

「著しく性的感情を刺激」するという基準はここに記載されています。これをどう捉えればよいでしょうか。
条例にある、東京都規則を見てみます。

第15条 条例第8条第1項第1号の東京都規則で定める基準は、次の各号に掲げる種別に応じ、当該各号に定めるものとする。
一 著しく性的感情を刺激するもの 次のいずれかに該当するものであること。
イ 全裸若しくは半裸又はこれらに近い状態の姿態を描写することにより、卑わいな感じを与え、又は人格を否定する性的行為を容易に連想させるものであること。
ロ 性的行為を露骨に描写し、又は表現することにより、卑わいな感じを与え、又は人格を否定する性的行為を容易に連想させるものであること。
ハ 電磁的記録媒体に記録されたプログラムを電子計算機等を用いて実行することにより、人に卑わいな行為を擬似的に体験させるものであること。
ニ イからハまでに掲げるもののほか、その描写又は表現がこれらの基準に該当するものと同程度に卑わいな感じを与え、又は人格を否定する性的行為を容易に連想させるものであること。

2 東京都青少年の健全な育成に関する条例施行規則(PDF)より
http://www.seisyounen-chian.metro.tokyo.jp/seisyounen/08_jyourei.html

「著しく性的感情を刺激」する、もっとも厳しい基準と思われるイを見てみると、
「全裸、半裸」を描写し、なおかつそれが「卑わい」又は「人格を否定する性行為」と思われるもの、となっています。
「又は」は、どちらか一方という意味ですから、
さらに厳しく捕らえると「半裸描写が卑わいと感じられ」たら指定されると読み取れます。
卑わいであるかの判断は個人により違い、その判断は審議会が行いますから、
明確な描かれた絵の根拠となるのは「半裸」の描写ということになります。
表現規制問題が話題になると、エロマンガ(性行為を多く描写したマンガ)は、指定して当然である、
成年マークをつけ、表示図書とすべきであるという意見が良く見られますが、
それらはロに対処した場合を言い、厳密に条例に従うとすると、イに該当する、
半裸以上の作品は全て成年マークをつけなければならないことになります。

一方、この基準について、都はなぜかより「緩い」基準を設け、「著しく性的感情を刺激」とは具体的に、
「性器の明確さ」、「体液の多さ」、「擬音の多さ」と定義しているようです。

「著しく性的感情を刺激する」かどうかは、単に全裸や性交シーンがある程度では該当せず、その判断は、性交シーンにおける性器の描写の明確さ、擬音(性交に伴って生じる音)や体液の描写の多さなどによることとされます。
上記のような、現在の指定基準の解釈は、昭和39年以来の条例の運用の中で、出版業界との間で共通了解の形成に努めてきたものであり、「子供との悪質な性交場面の描写がある」だけでは該当しません。

※別添 東京都青少年の健全な育成に関する条例改正案 質問回答集
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2010/04/20k4q500.htm

しかし、この基準は飽くまで都が定めた基準であって、審議会がその基準に従うものではありません。
実際に、審議会に出される資料には、該当指定基準として、施行規則のものを使用しており、
都はダブルスタンダードの立場をとっていることが分かります。
(また、この都が定めた「著しく性的感情を刺激」する基準は、新基準を設けるための根拠となったものでもあります)
また、この文面には、出版社との了解の基とありますが、
これでは利害関係のある相手との調整と受け取れます。
この基準は青少年の健全な育成を目的としたものでなければならず、
共通了解を形成するのは本来ならば、審議会の委員の間で行われるもののはずです。
この記述ではその信憑性が疑われると思われますが、都が定めた基準として、まず受け入れて次に進みます。

まとめます。
・「著しく刺激する」「刺激する」「刺激しない」のうち、「著しく性的感情を刺激する」とは、
 東京都規則の中から最も厳いものを見ると「半裸描写が卑わいと感じられ」るものである。
・一方、都は「性器の明確さ」、「体液の多さ」、「擬音の多さ」という基準を設け、判断している。
 また、その基準は新基準を設けるための根拠としていた。

■指定図書の例・快感トリップ凛
上記のように、都はかなり厳密に、自分たちがどのように諮問図書を選定するかを決めています。
ではその通りの選定を行っているのか、ある指定図書を例にとりながら見て行きたいと思います。

ここで取り上げる作品は、「快感トリップ凛」という作品で、
2012年3月17日に発売され、4月9日に審議会において旧基準で審議され、指定図書となりました。

タイトル: 快感トリップ凛(1)
作者  :秋口幸迅(作画)、 みやすのんき(原作)
出版社 :日本文芸社

http://www.metro.tokyo.jp/INET/KONDAN/2012/04/40m4a100.htm

都が旧基準で諮問図書と判断するのは、「性器の明確さ」、「体液の多さ」、「擬音の多さ」でした。

「性器の明確さ」
審議会で諮問される作品は、多くが性行為を主題としたものが取り上げられます。
ですので男女の性器が場面内に登場するのですが、
それらは修正液で塗られて消されたような加工がされています。
原稿の段階では描かれているのですが、出版社側で修正を行うということが慣例的に行われているようです。
したがって、審議会で扱われる作品はこの点はほとんどがクリアされています。
一方、この「快感トリップ凛」は、原稿の段階からその点が考慮されており、
修正されているのではなく、「最初から描かれていない」という方針が採られています。

「体液の多さ」
体液は性行為時に分泌される、膣分泌液、精液などと思われます。
諮問図書の多くは、性器と違い、きちんと描写されている作品がほとんどですが、
近年はその描写量が減少傾向にあるようです。
「快感トリップ凛」は、こちらも徹底して描かれていません。
体液として描写されるのは、唾液のみです。

「擬音の多さ」
この表現は前記2つと違い、しっかり描かれており、作品よってさまざまです。
ページ内における絵の大きさが、大きいほど大きく、多く描写される傾向があるようです。
「快感トリップ凛」は、前の2つを補う形で表現されています。
しかし、その量は他の指定図書と比べても少ない描写です。

以上から「快感トリップ凛」は、都の「著しく性的感情を刺激するという基準」では、
唯一描写のある「擬音の多さ」が諮問図書とした理由と予想されます。
しかし、「擬音」というのは文字情報であり、
審議会では小説などの文学作品は審査せずとしています。
この基準が妥当であるのか疑問を感じるとともに、
「快感トリップ凛」の諮問に恣意性を感じます。

また、審議会に出された資料には、「快感トリップ凛」の指定基準は、
施行規則第15条 第1項第一号 イ・ロ とあり、
「全裸半裸」そして「性的行為を露骨に描写」によって、
「卑わい」又は「人格を否定する性行為」と感ぜられる、
とされています。

一方で、この作品には少女への強姦シーンが多く描かれ、
それにより死に至るような、残酷な場面もあり、
新基準に触れる可能性がある点を言及しておきます。

次回に続きます。
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by k1kuraki | 2014-05-20 21:22 | 都条例