都庁の人に聞いてきた!2(小原篤のアニマゲ丼)を読んで

■このブログと私自信の趣旨について

今回はかなり詳細な部分に触れるため、私自身やこのブログの趣旨が不明確になってしまうのを防ぐために、
始めに記しておきたいと思います。

1.青少年の健全な育成、福祉の保全を目的とする
 条例に記されている目的と同じく私も青少年の健全な育成を目的としています。
 しかし、審議会や事務局が選ぶ指定図書が、青少年の健全な育成を阻害しているとは私には思えず、
 また、条例に記載された指定図書に付する罰則は不当に重すぎると感じ、
 そして何より、これらは青少年の性に関する情報の取得や、自ら学ぶ機会を奪うものであると考え、
 私は都条例による表現規制に反対の立場をとっています。

2.企業、作家の表現活動、経済活動の保持、および知る権利の保持を目的とする
 企業、作家の表現活動、経済活動は、1.が守られている以上、最大限に尊重されるべきであると考えています。
 出版社や各種小売の行っている、ゾーニングによる自主規制は徹底されており、賞賛されるべきであり、
 さらなる自主規制を行わなければならない理由は、私には思い当たりません。

3.行政の不正な活動に対する監視、及び意思表示を目的とする
 1.2.が行政によって間違った方向に向かっていないか、不当に侵害されていないかを監視、考察し、
 それを民主主義に則って、意思表示しています。

今回は3.の内の、都が捉えている条例の解釈について触れています。


■「不当に賛美し又は誇張する」とは?

朝日新聞DEGITALで連載されている、小原篤さん執筆の「小原篤のアニマゲ丼」で興味深いインタビューが掲載されています。

都庁の人に聞いてきた!2(小原篤のアニマゲ丼)
http://digital.asahi.com/articles/ASG5Q7VY1G5QUCVL01N.html?_requesturl=articles%2FASG5Q7VY1G5QUCVL01N.htmlamp;iref=comkiji_txt_end_s_kjid_ASG5Q7VY1G5QUCVL01N
(無料で読めますが、登録が必要となっています)

インタビューを受けているのは、東京都青少年・治安対策本部総合対策部連絡調整担当課長・勝又一郎さんです。
記事では条例の、有害図書の新基準での指定について触れられています。

考察する前に条例に関して復習したいと思います。
まず、都は「指定図書」という青少年に有害であるという図書を毎月2、3冊ほど決め、
その図書の扱いに重い罰則を設け、制限しています。
指定図書を決めるまでの手順の内、都行政(事務局)が事務として行うのは、

1.図書の購入(毎月100冊以上)
2.諮問図書の決定(毎月2,3冊ほど)

の2つで、また、新基準で諮問するのか、旧基準で諮問するのかも都が決めています。
諮問図書とは、指定図書となる可能性があると事務局が判断し、選んだ図書のことを言います。
その後、選ばれた諮問図書は、青少年健全育成審議会で審議され、指定図書となります。

条例に記載されている新基準についての記述はこちらで、
(不健全な図書類等の指定)
第8条、第1項、第2号
二 販売され、若しくは頒布され、又は閲覧若しくは観覧に供されている図書類又は映画等で、その内容が、第7条第2号に該当するもののうち、強姦等の著しく社会規範に反する性交又は性交類似行為を、著しく不当に賛美し又は誇張するように、描写し又は表現することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を著しく妨げるものとして、東京都規則で定める基準に該当し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあると認められるもの

(図書類等の販売等及び興行の自主規制)
第7条 第2号
二 漫画、アニメーションその他の画像 (実写を除く。)で、刑罰法規に触れる性交若しくは性交類似行為又は婚姻を禁止されている近親者間における性交若しくは性交類似行為を、不当に賛美し又は誇張するように、描写し又は表現することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を妨げ、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの

1 東京都青少年の健全な育成に関する条例(PDF)より
http://www.seisyounen-chian.metro.tokyo.jp/seisyounen/08_jyourei.html

条例に記載されている東京都規則のうち、近親者間の性行為について記載されているのはこちらです。
(指定図書類、指定映画等の基準) 第15条 第2項 第2号
  条例第8条第1項第2号の東京都規則で定める基準は、次の各号のいずれかに該当するものであることとする。
二 近親者間 (民法 (明治29年法律第89号)第734条から第736条までの規定により、婚姻をすることができない者の間をいう。)における性交等を、当該性交等が社会的に是認されているものであるかのように描写し若しくは表現し、又は当該性交等の場面を、みだりに、著しく詳細に若しくは過度に反復して描写し若しくは表現することにより、閲覧し、又は観覧する青少年の当該性交等に対する抵抗感を著しく減ずるものであること。

2 東京都青少年の健全な育成に関する条例施行規則(PDF)より
http://www.seisyounen-chian.metro.tokyo.jp/seisyounen/08_jyourei.html

条例と施行規則を詳しく見ていきます。
条例に記載されている「賛美し又は誇張する」とは何でしょうか?
これはおそらく、東京都規則に記載されているもののうち、それぞれ、

「賛美」→社会的に是認されているものであるかのように描写
「誇張」→反復して描写

を指しているものと考えられます。


近親者間における性交等を、
 当該性交等が社会的に是認されているものであるかのように描写し若しくは表現し、 (条例の言う賛美)
 又は当該性交等の場面を、
  みだりに、
  著しく詳細に
  若しくは過度に
   反復して描写し若しくは表現することにより、 (条例の言う誇張)
閲覧し、又は観覧する青少年の当該性交等に対する抵抗感を著しく減ずるものであること。



「賛美」と「誇張」は「又は」で繋がっていますので、どちらか一方でも該当すれば、指定図書になりうるようです。
つまり、賛美していなくても、誇張して描いているだけでも指定図書になると考えられます。
誇張がもし、図書内のページ数の割合を示しているとすれば、
新基準での指定は、包括指定のような方法を採っている可能性があります。

また、旧基準と違い、新基準は強姦、近親者間の性行為という、見た目や文面から判断しやすい基準があります。
したがって、事務局はそれらが描かれた図書は全て諮問図書とすると、事務的に判断することが可能であるため、
「不当に賛美し又は誇張する」という部分の判断はしていないように思われるのですが、
過去に「ヨスガノソラ」という作品が、この基準に該当せずとして、事務局側で一方的に破棄されてしまったことがありました。
〇青少年課長 それでは資料の 20 ページをご覧ください。4 月処理分の都民の申出でございます。
まず 1 番。メールによる申出が 1 件ございました。内容は 「性的な描写のあるテレビアニメについて」で、兄と妹の近親相姦シーンを含む 5 作品につきまして、都民から指摘がありました。1 作品は DVD になっているものを購入して確認を行いました。他の 4 作品につい てはインターネットの動画で確認いたしました。このうち 「ヨスガノソラ」とい うアニメが兄と妹の近親相姦を描いております。ただ、社会的に是認されているかのように描いたり、あるいは必要以上に反復して詳細に描いているというものではありませんので、新基準等には該当しておりませんでしたその他のアニメ 4 作品につきましては、いわゆる旧基準の対象 となりますが、いずれも該当するものではありませんでした。


つまり、事務局は「不当に賛美し又は誇張する」という判断までを含めて、諮問図書を決定していると考えられます。

ここまでをまとめます。
・新基準の定める賛美し又は誇張するとは、それぞれ、「賛美」→社会的に是認されているものであるかのように描写
 「誇張」→反復して描写 を表す様である。
・事務局は、諮問図書を決定する際、ただ「強姦、近親者間の性行為」が描かれているかのみだけでなく、
 「不当に賛美し又は誇張する」かまで踏み込んで判断している。


■都が捉えている新基準の考え方

以上を踏まえて記事を読んでみると、インタビューを受ける担当課長は、
「不当に賛美し又は誇張する」とは、審議会の判断であると頻りに仰っていますが、
審議会の判断とは「指定図書」を決定する際の判断であり、
都は同じように「諮問図書」を決定する際にこの基準を用いているはずですが、それには言及されていません。
あまつさえ、記者が考える基準の解釈を蔑ろにするような不誠実なことまで言われています。
一般市民の判断基準より、都の職員の判断基準を重んじるということなのでしょうか。
「妹ぱらだいす!2」を先ず選んだのは都の職員であることを見失ってはいけません。

最も注目すべき箇所は、「不当に賛美」の基準の解釈です。
担当課長はこの基準を「(主人公たちが)いけないことだと思わない」ことと表現しています。
この表現を借りるのならば、4つの段階で「賛美」を表すことができ、

1「良いことだと、思う」(積極的肯定)
2「いけないことだと、思わない」(消極的肯定)
3「良いことだと、思わない」(消極的否定)
4「いけないことだと、思う」(積極的否定)

と書くことができます(数字が小さいほど賛美の度合いが高い)。
更に「よくないことだと表現されていない」ため不当に賛美であるとも答えているため、
有害図書とならないためには、4の「いけないことだと、思う」という描写が不可欠であると考えているようです。

ここで考えられる問題は、小原篤さんも指摘されているとおり、一般に「不当に賛美」と言うと、
近親者間の性行為を、1の「良いことだと、思う」、積極的肯定と描写することのみであると普通は思うため、
2の「いけないことだと、思わない」と受け取れるから、
4の「いけないことだと、思う」という描写がないから、を「不当に賛美」と捉える様な、
事務局、審議会の認識と、一般的認識とに剥離が見られる点です。


■「妹ぱらだいす!2」の内容と、都の解釈の矛盾

では都の解釈と作品の内容を実際に見比べて見ます。

1.賛美:社会的に是認されているものであるかのように描写
この作品内では登場人物が圧倒的に少なく、会話が成立しているのは、主要兄妹のみであるため、
社会的認識を推察するには、彼らのセリフからでしか行えません。
しかし、近親者間の問題について明確な描写が一箇所あります。
P29において、寝ている妹の体に触れようとする兄のセリフとして、
「俺は自分の妹に何をしようとしてんだ!」と言い、思いとどまるという場面です。
c0252112_20124418.png

これは明らかに否定する言葉であり、賛美とは逆のもので、
先ほどの4「いけないことだと、思う」(積極的否定)に当たると思われます。
インタビューに答えた担当課長の説明にある、「よくないことだと表現されていない」とは明らかに違っています。

2.誇張:反復して描写
これは別府資料1 平成26年5月 諮問図書に係る該当指定基準等
http://www.seisyounen-chian.metro.tokyo.jp/seisyounen/09_646_menu.html#647
から、賛美しているかは別として、近親者間の性行為、性交類似行為の該当ページが記されており、
そこからページ数を導くことができます。

2話:46-49 計4ページ
3話:70-74 計5ページ
4話:92、94-98 計6ページ
5話:118-121 計4ページ
6話:138-146 計9ページ
7話:167-169 計3ページ
書き下ろし:175-177,179-180,182-183,185-186,188 計10ページ
合計41ページ

作品全体のページ数は192ページであるため、約2割が近親者間の性行為、性交類似行為の描写に割り当てられています。
しかし東京都の有害図書は、包括指定と違い、個別指定を行っています。
したがって、誇張:反復して描写、の判断は別の方法を採っている可能性があります。
また、施行規則には反復の前に、ⅰみだりに、ⅱ著しく詳細に、ⅲ若しくは過度にという条件がつきます。
これらについては判断が難しく、このブログでは判断を置くことにします。
記事内においても誇張については、詳しい言及がされていませんでした。

■まとめ
過去の事例から
・都の事務局は、新基準で諮問図書を決定する際に、「強姦、近親者間の性行為」の描写だけでなく、
「不当に賛美し又は誇張」しているかどうかということまで判断している。

インタビューから
・都が考える「不当に賛美」とは、「いけないことだと、思う」(積極的否定)という描写がないことであると捉えている。

「妹ぱらだいす!2」を読み比べて
・「いけないことだと、思う」(積極的否定)という描写があったが、
諮問図書を決定する際、都はこれを無視した。

できるだけ客観的に考察するように勤めてまとめました。

しかし最初にも言いましたが、これらはかなり細部の話になります。
作品内の描写や、条例の解釈は、青少年の健全な育成を目的にしています。
「妹ぱらだいす!2」を読んだ影響で、青少年が近親者間の性行為を行うようになるとは思えません。
仮にそれらを心配するのならば、都が率先して近親者間の性行為を行わないように周知を徹底すれば良い話です。
例えば「妹ぱらだいす!2」に、東京都の名でそれを知らせる紙を貼り付ければ良いでしょう。
30万円の罰金という罰則をもうけ、表現の自由と経済活動の自由を妨げ、
都税を使いこのようなことをする理由はないと私は思います。
[PR]

by k1kuraki | 2014-05-29 13:47 | 都条例