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シュガーポットへようこそ を読んでの感想

18歳未満の方へ
ここで扱う作品、ゆずぽん著「シュガーポットへようこそ」は東京都により有害図書指定されています。
この作品を含む有害図書指定された作品は、
書店に陳列の義務、包装の義務、未成年への販売禁止の義務があり、
これらが守られない場合、書店に対して30万円の罰金が課せられます。
東京都内の書店に於いて、手に取って移動させたり、購入したりしないようにして下さい。

先日指定図書となってしまった、ゆずぽん先生の「シュガーポットへようこそ」を読み終わり、
感銘を受け、私なりに感じた感想などを載せたいと思います。

まずストーリーは、
ペンション「シュガーポット」の女性スタッフ5人それぞれの恋愛を綴ったラブストーリー物です。
オーナー、接客、シェフ、事務、新人がそれぞれの性格を基軸として、
愛欲、感情や理性、社会性等の様々な要素を取入れながら男女間の関係を、
性愛を象徴としながら進んでいきます。

感想を書く前に、青年コミックの性愛描写の特徴について触れたいと思います。
出版社の自主規制により、「成年マーク」を表紙に記した成年コミックと、
それのない一般コミックの2種類に分類されます。
成年マークは主に性愛を題材とした作品に付けられていますが、
一般コミックでも性愛を題材とした作品があり、
これらの一番明確な違いは、性器の描写の有無です。
現在一般コミックで性愛を扱った作品は、性器に白い修正が施されています。
その為、ビジュアルとして劣り、性愛描写以外の大きな主軸となる要素が不可欠となります。
それは作品によって、ストーリーであったり、綿密でよりリアルな背景描写、社会描写であったりします。

この「シュガーポットへようこそ」で性愛と伴に描かれる要素は、
人物の性格、愛情、感情等といった人物描写の多様性です。
ペンションスタッフのお客様に対しての愛情、不器用な相手への慈愛、
サディズムとマゾヒズム、男女間の信頼、体に対してのコンプレックス等、
一つの職場で働く人間でありながら、その形は大きく違い、
他人から見られる評価と本来の自分とのギャップなどと相まって、
他の人物との比較からより一層際立ちます。
その多様性は教科書的ですらあると言えます。

例として5人の中からメインとなるオーナーの話を紹介します。

2人で予約したカップル、しかし夜になって訪れたのは男性のみ。
事情を聞くと性生活の不一致で仲違いしてしまったらしく、
それを聞いた女性オーナーは、自分と一緒に練習してみてはどうかと持ちかけます。

ここでの誘いはお客様への慰安という意味でのもの、というのが建前になっていますが、
それは明らかに逸脱しており、男性個人に対する好意によるものであることが示唆されます。

そして、後日男性は再びペンションを訪れますが、
オーナーの働きによって寄りが戻った彼女も一緒です。
今度はその彼女から性の相談をされ、彼女を労わってばかりで、
男性は自分を二の次にして物足りなさそうであるらしい。
そこで2人で男性を奉仕することになる。

ここでのそれぞれの感情は、男性はオーナーへ好意が移っていることが描写され、
一方オーナーは、連れの女性の男性への想いが真剣であることを感じ取り、一歩引く事を決意します。
その一歩引く所以は、彼女もペンションに訪れたお客様であるから悲しませることはできない、というもので、
ペンションのスタッフとしての好意と、男性への好意が先ほどと逆転してしまっていることが描写されます。

これら複雑に絡まりあった多種多様の愛情の出現がこの作品の魅力で、
一筋縄ではいかない男女の関係が巧みに描かれています。

青少年への問題点を私なりに考えると、
この作品はその性質上、避妊具の描写ができないということが最大の欠点であると言えます。
ですので、避妊具を装着していると想像できない読者に対しては、
配慮が必要であると言えると思います。
しかし、それは作品内で扱うという様な、個別の案件というよりも、
読者への基礎教育としてもっと大きな枠組みでなされるべきではないかと思います。

その点を除けば、この作品は、性愛を伴う恋愛、情欲、社会性などを扱った物として、
とても優れていると感じました。
また、酒造所の描写、シェフとグルメ雑誌の記者というアイディア、会話のセリフ等も秀逸で、
端的に言えば非常に面白かったです。
東京都では18歳未満には販売、閲覧が禁止されてしまいましたが、
私は彼らにこそ見て欲しい作品であるとすら感じました。
この作品を手に取ることができる方達には、
ぜひ一読して欲しい作品です。

by k1kuraki | 2013-03-29 00:28 | 都条例